ルムンバの叫び

ルムンバの叫び [DVD]

ルムンバの叫び [DVD]



 レンタルビデオ屋で見かけて借りてきました。1960年前後のコンゴを描いた,ドキュメンタリータッチの映画です。
 中央アフリカコンゴ民主共和国は,現在では軍事政権による独裁国家として,貧困と飢餓の激しい地域として悪名の高い国です。しかし,コンゴにもかつて熱気に包まれ希望に夢溢れた時期がありました。1960年,後に「アフリカの年」と呼ばれることになったこの年に,コンゴ宗主国ベルギーから独立し,国家として新たな道を歩もうとしていました。その独立運動を先導し,コンゴの初代首相となったパトリス・ルムンバ(1925−61)がこの映画の主人公です。
 ルムンバはもともと郵便局員でしたが,弁が立つことからベルギー人に目を付けられてビール工場に勤めるようになり,そこに勤めながら政党を結成,第1回選挙で過半数を獲得し,首相に任命されます。しかし,独立を認めながらも利権を保持したいベルギーの策略により,豊富な鉱物資源をもつカタンダ州が独立宣言をし,軍部は統制がとれないなど混乱が続き,ついにアメリカは軍を率いているモブツに接近してクーデターを起こさせ,ルムンバは失脚の後,暗殺されてしまいます。独立をめざし,独立後は様々な部族からなるコンゴをネーション-ステートとして一つにまとめあげようと情熱を傾けるルムンバでしたが,結局は先進国の利害によってその道は絶たれてしまったのです。コンゴはその後,モブツの軍事独裁政権のもと国名を「ザイール」と変え,最初に書いたような状況に陥ります。
 もちろん,ルムンバがめざしていたものが正しかったかどうかはわかりません。しかし,コンゴの一つの情熱が絶たれたことは,もしかするとコンゴの人たちにとって大きな損失だったかもしれません。「ホテル・ルワンダ」でもそうでしたが(id:pton:20060820),先進国の利害関係と無関心に翻弄されるアフリカの無力さ痛々しく表現されています。
 ちなみに映画では,ジョセフ・カバセレ(グラン・カレ)のアフリカン・ジャズの当時の曲が,独立前夜の熱気を表現しています。特にアンデバンダンス・チャチャチャ(独立チャチャチャ)はコンゴの独立を祝した曲です。当時はコンゴのポピュラーミュージック(ルンバ・コンゴレーズと呼ばれていました)も最盛期を迎え,汎アフリカ主義的な音を響かせていました。
やっぴさんのHP…「ルムンバの叫び」や「ホテル・ルワンダ」の歴史的な背景について分かりやすく説明されています。
(2007.6.20記述)